定款の記載事項
定款に記載する事項には、絶対に定款に記載しなければならない「絶対的記載事項」、定款に定めておかないと有効化されていない」「相対的記載事項」、自主的に定款に記載する「任意的記載事項」の3種類があります。
絶対的記載事項
定款の中に必ず入れておかなけばならない事項を「絶対的記載事項」といいます。絶対的記載事項で記載すべき項目は法律により定められいます。絶対的記載事項に漏れがあると、定款が無効となってしまいます。
目的
定款に記載する「目的」とは、会社が行う「事業の内容」です。
会社を立ち上げてレストランの営業をしようとするなら、最もシンプルな「目的」は「飲食業」になります。さらにパンなどを作って売っているなら「パンの製造販売」となります。
会社は、定款で「目的」として記載している事業の範囲内でだけ活動することができ、「目的」に記載していない事業はできないとされています。将来において行うかもしれない業務や興味がある業務など、行う可能性がある業務を「目的」に入れておくことをお勧めします。
商号
商号は、個人でいうところの名前にあたり、会社の顔ともいうべき大事な決定事項です。
どのような「商号」を用いるかは原則として自由ですが、まったく同じ住所でまったく同じ商号では区別することができないため登記することはできません。また、他人の商号と同一あるいは類似の商号を用いることは商法・会社法以外の法律によっても規制されています。
商号に使用できる文字も、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字、及び一定の符号(&、・、−など)に決められています。 また、株式会社では商号に「株式会社」を入れなければならず、銀行や保険会社などの一定の業種には「銀行」や「保険」などのその業種を表す文字を商号の中に使用しなければなりません。
本店所在地
会社の住所がある場所を「本店」といいます。会社の本店は1つの会社につき1つの本店を定めなくてはなりません。
また、本店の所在地と実際に事業活動をしている場所が同一である必要はありません。貸事務所などを借りて本店を置くことも可能ですが、貸マンションのような賃借物件の場合、賃貸借契約で事務所としての使用を禁止していることがあるので契約内容を確認する必要があります。
定款作成時において、本店の所在地は最小行政区画(市区町村)まで記載すれば問題ありません。
本店住所は登記事項であるため、登記する際には詳しい住所が必要です。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
出資財産額又は最低額を記載します。基本的にはこの価額が株式会社設立時の「資本金」になります。
資本金の決め方ですが、資本金があまり少ないと、事業年度ごとの決算において少しでも赤字を出すと、すぐに債務超過になってしまいます。債務超過になってしまうと、必要なときに借り入れをしようとしたときに融資が受けられない可能性が高くなります。また、日本ではまだまだ資本金によって会社の印象が決まる慣習が残っており、取引にも影響がでる可能性がありますので、ある程度の資本金は必要です。ただし、資本金によって消費税の課税開始機関が変わってくることがあり、資本金が1,000万円未満の場合は設立後2年間は消費税の納税が免除になります。
上記のことを考慮すると、資本金としては、事業を始めるための初期費用と事業が軌道に乗るまでの運用資金として3〜6ヵ月分に設定するのが1つの目安となります。
また、許認可が必要な事業によっは、最低資本額が決められていることがあります(例えば、建設業では原則として500万円以上が必要です)。
発起人の氏名と住所
出資者のことを定款では「発起人」といいます。発起人の数には制限がありませんので、1人でも問題ありません。家族や知人に出資してもらった場合、出資してもらった全ての方が発起人になります。
発行可能株式総数
発行可能株式総数については、定款認証時に定めておく必要はありませんが、定款に定めない場合は、会社の成立のときまでに定款を変更してその定めを設けなければなりません。
発行可能株式総数は、譲渡制限会社(非公開会社)の場合は制限はありませんが、公開会社の場合はすでに発行している株式の4倍までが上限となります。
発行可能株式総数については、定款認証時に定めておく必要はありませんが、定款に定めない場合は、会社の成立のときまでに定款を変更してその定めを設けなければなりません。
また、設立時発行可能株式総数は、非公開会社の場合を除き、発行可能株式総数の4分の1を下回ることはできません。
相対的記載事項
定款の記載事項の中には「相対的記載事項」という事項があります。相対的記載事項は、決めても決めなくても定款自体の効力は有効ですが、決めた場合には定款で定めておかなければ規則として効力が認められない項目です。たとえば、「株式の譲渡制限に関する定め」や「取締役等の任期の伸長」「公告の方法」といった項目があります。
変態的記載事項
現物出資
出資は現金以外にも不動産、有価証券、自動車、パソコンなどですることも可能です。
財産引受
会社の設立条件として、発起人から事業用の財産を譲り受ける契約をすることが可能です。
発起人の報酬、特別利益
設立費用の求償
株式の譲渡制限に関する規定
会社の株式は自由に譲渡することができまうすが、知らない間に第三者が株式を取得してしまうと、会社の経営に支障が出てきてしまいます。このようなことを防ぐために、株式を譲渡する場合に会社の許可が必要とする規定を設けることができます。これを「株式の譲渡制限に関する規定」といい、一般に「譲渡制限会社(非公開会社)」といいます。
1人発起人のような譲渡の可能性がない場合でも、この規定を設定していると、役員の任期を延ばしたり、簡素化できる手続きがあったりするので設定しておいて損はありません。
株主総会などの招集通知期間の短縮
株主総会の招集通知は、通常2週間前に通知を出さなければなりませんが、定款によって短縮することが可能です。
取締役会の招集通知期間の短縮
株主総会の招集通知は、通常1週間前に通知を出さなければなりませんが、定款によって短縮することが可能です。
取締役会の決議の省略
取締役が取締役会で決議する事案を提案した場合において、取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意を意思表示をしたときは、当該提案を可決した決議があったものとみなす旨を定款に定めることができます。
役員の任期の伸長
役員には、それぞれ任期はあります。会社法では取締役の任期は2年、監査役の任期は4年ですが、非公開会社の場合は定款に記載することによって10年に伸長が可能です。家族経営の株式会社では重任登記の回数を減らすことができます。
株券発行の定め
株券は発行しないのが原則ですが、株券を発行する場合は定款で定める必要があります。
公告の方法
会社は、株主や債務者などの利害関係者のために公告が義務づけられています。
公告の方法は以下の3つの方法があり、いずれかを選択できます。
1 官報に掲載する方法
2 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
3 電子公告
公告方法は官報が一般的で、電子公告の方法を取る場合は、URLの登記が必要になります。
任意的記載事項
任意的記載事項は、会社が、自主的に定款に追加した事項を任意的記載事項と言います。任意的記載事項は相対的記載事項と同様に決めても決めなくても定款自体の効力は有効です。また、決めた内容も定款に記載されていなくても規則として有効ですが、定款に記載することによってより拘束力を高めるといった目的があります。
任意的記載事項に記載される項目は、法律に定められた範囲であれば、どんな項目でも認められます。例えば、「事業年度」、「取締役等の役員の数」や「株主総会に関すること」などさまざまな項目がります。
事業年度
会社の利益または損失を算出するためい、一定の期間を設ける必要があり、この期間を「事業年度」といい、この期間の区切りを「決算期」といいます。
決算期をいつにするかについては、特に決まりはありませんが、繁忙期に決算期を決めてしまうと、決算のため書類の整理や棚卸などが重なり大変になってしまいます。 また、消費税の免税期間や決算期の後には税金を納める必要がありますので資金繰りなとも重要になってきます。これのことを考慮して決定することをお勧めします。
取締役等の役員の数
株式会社の必要期間としては、取締役が1名以上必要で、取締役会設置会社では、取締役が3名以上と監査役が1名以上必要になります。
株主総会の議長
株主総会における議長を誰がやるか、またはどのように議長を決めるかを記載します。
定時株主総会の招集時期
定時株主総会は、決算期を迎えたあとの一定の時期に招集する必要がありますので、その時期を記載します。
基準日
株式会社は一定の日を定めて、その日の時点で株主名簿に記載されている、または登録されている株主をk株主総会の議決権や配当金の受け取りなどを行使できる株主とすることになっています。この一定の日を基準日といいます。